目白からの便り

ものつくり大学 卓越したひとづくり

埼玉県行田市に、関東八名城と称せられる忍城(おしじょう)がある。この城は、豊臣秀吉が北条氏の守る小田原城を攻めた時、ただ一つ落城しなかった堅牢な城である。映画、「のぼうの城」でもその題材になった。豊臣軍の一翼を率いた石田三成の指揮する2万の大軍をわずか500名の城兵で守りきった。手勢わずかでも、巧みな構造で大軍を寄せ付けなかった。

この行田市に「ものつくり大学」がある。私の親しい友人がこの大学に着任したこときっかけに訪問した。この大学の設立は新しく2001年、21世紀の幕開けとともに開学した。JR高崎線の吹上駅が最寄りの駅になる。皆さんは、ものづくりの誤りでは、「つ」ではなく「づ」ではないのかと疑問に持たれるかもしれない。私も気になり、学校説明の時に伺った。古来の日本語である「やまと言葉」には濁音がないことに由来するとのこと。伝統的な日本の古くからの「ものつくり」の精神を大学名に記したのかと感じた。

ものつくり大学で学生の育成に力を入れていることは、技能のわかる技術者、「テクノロジスト」を目指してということである。理論と実技を融合した革新的なカリキュラムと徹底した少人数実践教育で社会にとってより実践的な即戦力となる真の実力を見つけるための大学になっている。学部名称も「技能工芸学部」として、その傘下に情報メカトロニクス学科と建築学科の二つがあり、さらに8コースの学科に分かれる。教員の50%が企業経験者という特異な指導体制も有しているのも特徴である。

大学構内を見学しながら感嘆したことは、そのレイアウトである。構内の2階部分が教室、講義フロアー、1階部分は実践的なまさに工場機能のようなレイアウト構成になっている。理論を学びながら、それをすぐに実践で体験するという試みは、私のような長く民間企業にいる人間にとってはとても魅力的な人材育成機関であると感じた。モノづくりのプロセスには、企画⇒研究・開発⇒設計⇒技術(量産・生産技術)⇒製造⇒送品(営業・販売・物流)といった流れがある。製造業で経験を積んでいる方は、DR(デザインレビュー)というプロセスになじみが深いかと思うが、それぞれの過程で仕事の受け渡しの品質を保つ。

私は、他国と比べて日本企業の強みを考えた時、このプロセスの中核である生産技術、量産技術の卓越さにその原動力があったのだと感じている。一つのモノを創ることは容易でも、一定の品質でしかも適正コストで沢山のモノを量産することとの間には大きな隔たりある。この開発・設計と製造の間を埋めるのが「生産技術」であり「量産技術」である。この技術の力量が前工程の開発や設計の仕事の質を良質にしていくサイクルを生みだす。このことは、モノづくりでなく、私のような人事の仕事でも同じである。人事制度や賃金体型を新たに考案する場合、実際の運用(オペレーション)が成立しなければ、その価値を発揮しないのである。

久しぶりに日本のお家芸であり、国際競争力をけん引してきた「モノづくり」の人材育成の傑作の現場を訪れることができた。小資源のこの国で、激烈な国際競争で他国に打ち勝つモノづくりをけん引する人材の育成は必須の国家課題でもある。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2024年9月13日  竹内上人

ものつくり大学のホームページ
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